司馬遼太郎著『殉死』
司馬遼太郎『殉死』
愛すべき「乃木の大将」のお話です。
西南の役での田原坂の戦いでは、負け戦ではないものの薩摩軍に軍旗を取られ、指揮官でありながら体を張って前線へ出て行き、日露戦争では旅順203高地を奪取し、多数の死者を出すもののロシア艦隊を撃沈させ、本人的には実力以上の賞賛をうけ、そして明治天皇が崩御したのち奥さんと共に自害した方です。
希典は飄々としたへたれのイメージだったのですが、古き良き日本の精神とでもいうのでしょうか、生真面目で思慮深く、律義で謙虚、そして、命の重さを十分に知った上で
確固たる優先順位に沿って生きた人なんだなと思いました。
どんな信念があろうと「死」を自ら選ぶことに私は共感することができないけれど、人間味溢れ、悩みもがきながらも、結果として、この時代を象徴する「美しい生き方」をした人物だと感じました。
司馬さんの作品はどれもそうですが、読むたびに違う感想を持つので次はなんて奴だ!と言っているかもしれませんが、今はそう思います。
命について深く考えるキッカケとなる素晴らしい作品です。
誉田哲也『インデックス』
誉田哲也『インデックス』
竹内結子さん、二階堂ふみさん主演でのドラマでも有名な「ストロベリーナイト」の
姫川玲子シリーズの短編集。裏社会の人たちがどんどん消されていく「ブルーマーダ―」事件後のお話や、玲子が刑事になる前後のエピソード的なもの等、本編のグロさを取り除いたちょっと軽めで読みやすいお話が8編入っていました。
お話の中での会話で、「いつか」と「お化け」は出た試しがないという格言?が出てきました。年賀状で毎年、毎年、今年こそ会おうね~!とコメント書き合う友達がいますが、いつか、いつかって思いながらもう10年以上会っていません…ほんと、お化けみたいなもの。
でもこの毎年のコメントで、元気にやってるんだな、心は通じてるんだなって、いつも思うんですよね。 彼女も読書が大好きで、お互いに読んだ本の感想を話しながら毎日登下校していた中学生当時の事を思い出します。今年こそは会いたいな(笑)
米澤穂信『満願』
米澤穂信『満願』
デビュー作「氷菓」は随分前に手に取ったことがあるのですが、文学作品をすごく意識した作風で簡単なことを小難しく表現する、まるで中2病的な作風に途中で嫌になって
読むのを辞めてしまっていました。
それから、米澤さんの作品を手に取ることはなかったのですが、表題のドラマをちらっと見てサスペンスとして重厚で非常に面白かったことから原作本にチャレンジしてみようと買って1年?くらい積本していた作品です。
まず、中2病的作風ではありませんでした(笑)米澤さんの立ち位置は性悪説なのかな?理性や常識、それに愛や欲望が絡み合い、人はどう思いどう行動すべきかがテーマだと感じました。
全編通じて、重苦しい空気感に支配され、人間の愛憎や罪と罰をひしひしと感じさせられる作品群。中でも表題になっている「満願」は生臭く、良い意味で読後感が最悪で米澤さんの真骨頂ではないかなと勝手に思っています。
生臭い読後感、湊かなえさんにも通じるものがあり、読んだら嫌な気持ちになるのは分かっているけど読むことによって黒い想いを持つのは私だけじゃない、自分の善悪どちらの想いも肯定してもらえそうと、そうやって、ついつい触れてしまいたくなる中毒性のある作者さんなのかもしれないですね。
まだこの1冊を読んだだけでここまで言うのは単なる妄想かもしれませんが、別の作品も読んでみて、この妄想が妄想なのか確信にかわるのか試してみたいと思います。
村田沙耶香『コンビニ人間』
村田沙耶香『コンビニ人間』
一見異端者としか見えない主人公も、普通に生きる妹も同級生も、対象は違えど承認されたくてマニュアルや周りに合わせて生きてる。そう、結局、何かに合わせて生きてる
信じるものが違えば、お互いが異端に見えるのは当たり前。信仰も政治的な支持も同じ。どんな生き方であれ腹を括って自分の信じる道を進むなら、それは間違いではないし、幸せな生き方なんだと思う。
相容れないものだと認識しても、攻撃しないでそういうものなんだと互いに尊重することができれば生きやすい世の中になるんでしょう。
いいね!やらインスタ映えやらの承認欲求への挑戦状。LGBT を始めとする少数派への理解。そういったメッセージが込められてる?なんて思いもわきました。
ただ、根拠なく自己評価が高く、批判や言い訳ばかりで行動に移さない、そんな人に対してだけは全く同調できない。